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丸善工業株式会社(香川県綾川町)

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丸善工業株式会社
(香川県綾川町)

【写真】竹内さん、川原さん 丸善工業は、1966年(昭和41年)設立。ファッションバッグを中心とするポリ袋を製造、販売している。
社員数は216名(2024年3月現在)。本社地区が約160名。他の営業所は10名未満である。
今回は、取締役経営推進本部長の川原信介さん、経営推進本部総務次長の竹内元さんからお話を伺った。

①小さい事業所では医師面接の際、地さんぽを活用するなど、200人規模の会社で着実にストレスチェックを実施するための工夫がされている。

まず、ストレスチェックの取組みについてお話を伺った。

プライバシーの保護にも工夫して取り組んでいます 「ストレスチェックは、義務化以降、毎年8月のお盆休み明けに実施しています。お盆休み前は、業務が忙しくストレスチェックに回答する余裕もありませんので、お盆休み明けの少し落ち着いているタイミングで、2週間程度期間を設けて回答してもらっています。ストレスチェック実施義務のない10人未満の営業所でも実施しています。」

「ストレスチェックは紙で実施しています。“機密ボックス”という鍵付きのボックスを社内に設置して、回答したらそこに投函してもらい、実施事務従事者である私(竹内さん)が回収してシステムに入力する作業を行っています。200人程度ですので、全員分を入力しても2時間程度で終わりますが、それでも負担感はありますので、2024年度はweb上でアンケートフォームを使用して実施する方法も検討しています。個人結果は印刷して封入して上長から社員本人に渡す形にしています。」

高ストレス者への面接指導には「地さんぽ」も活用しています 「産業医は、本社近くの医療機関の医師にお願いしています。ストレスチェックの実施者でもありますので、結果がまとまったら産業医がすべてチェックし、ストレス負荷の高い人に面接指導を実施するかどうかなどを判断しています。面接指導を実施する場合は、産業医のいる医療機関に行くことにしています。本社以外の各営業所は距離が遠いので、その社員に対して面接指導を実施する場合は、該当地域の地域産業保健センター(地さんぽ)にお願いしています。地域産業保健センターとの調整は本社にて行い、いつどこに行けばいいかを本人に連絡する形にしています。毎年、本社では2~3人、各営業所では1~2人が医師面接を希望しています。」

集団分析にも取り組んでいます 「集団分析結果も出力して、各職場の上長に渡しています。ただ、集団分析結果と、日頃、私たちが各職場と接しているときの印象が一致しないことがあり、戸惑うこともあります。ストレスがかかっていてもパフォーマンスが高い部署もあるので、その部署のストレスを下げる必要がはたしてあるのか、反対に、低ストレスの職場でパフォーマンスが低いこともあるので、職場が“高ストレス”という状況の受け止め方が悩ましいと感じています。もう少し違う角度から分析できるようになると、ストレスチェックの結果がより活用できるのかもしれません。」

②相談しやすい環境づくりによって、全体的に話しやすい雰囲気が上手に作られている。

次に、相談しやすい環境づくりについてお話を伺った。

社内相談窓口を設置しています 「メンタルヘルスやハラスメント関係の社内相談窓口として、私たち(川原さん、竹内さん)と、総務部門の女性社員のあわせて3人が担当しています。また、社員に対して、上司に話せなかったらこの人、この人に話せなかったらこの人、というように相談の優先順位を明示していて、入社時に資料として渡しています。社内相談窓口への相談はそれほど多くはありませんが、本人の話を聞いて、周りの人の意見も聞いて、職場調整をするといった対応をしたこともあります。ただ、どちらかというと、普段社内を歩いているときに声をかけられることの方が多いです。若い社員が、上長には言いづらいことを私たちに話してくれることもよくあります。 」

相談された内容は、職場環境の改善や人材配置に活用しています 「このように情報が自然と集まってくるので、本人から上長に伝えてほしいといった場合は、私から上長に直接話をして改善策をとってもらったり、人材配置に活かしたりしています。普段から声をかけてもらえる関係性であるということが一番大事だと思っています。」

③長時間労働を減らし、年間休日を増やし、有給休暇の取得率を上げるなど働き方改革に取り組んだ結果、メンタルヘルス不調者が減り、退職者も減り、売上は維持できるという好循環が生まれている。

最後に、長時間労働対策をはじめとした働き方改革の取組みについてお話を伺った。

「以前は長時間労働が当たり前の職場で、残業が月80時間を超える社員が20~30人いました。その頃は、メンタルヘルス不調になる方も多くいました。私(竹内さん)が対応していましたが、メンタルヘルス不調が長時間労働と紐づいていることを感じていたので、どうにかしなければならないと思っていました。」

「長時間労働は、10年近くかけて減らしてきました。会社の対応として、生産効率を上げたり、設備を更新したりといったことはやってきましたが、社員の意識はそう簡単には変わるものではありませんでした。そこを、竹内さんが『とにかくこれ以上残業は絶対に認めない』というスタンスで、各部門に口酸っぱく発信し続けたことで、社員もだんだんと、残業時間のことを気にするようになってくれたと思います。『限られた時間の中で、より高い成果を出すためには働き方をもっとこうしよう』など自発的に提案してくれるようにもなりました。」

「今は、毎月、全社員の残業時間のリストを作成し、オンラインの社内掲示板にアップして全員に公開しています。残業の多い部署には、その上長名と共に、来月気をつけてねということも記載しています。今は、仕事の問題でメンタルヘルス不調になる人は全くいません。」

「また会社の規定年間休日も、85日から120日に増やしました。有給休暇も必ず取得するようにしていて、大きく増加しています。休日を増やし、残業時間を減らしたことで全体の労働時間は大幅に減りましたが、売上は変わっていません。2024年は最高益に近づけそうな見込みになっています。」

「退職する人も以前より少なくなりました。製造業ですので、最初の2~3か月働いてみて、仕事内容が合わなかったから退職するという人は今でもいますが、3~5年働いてから辞めるという人は減っています。さらに、一度辞めた人が、『やっぱり丸善工業がいいから』と戻ってくることもありました。『丸善工業は人間関係がいいから、給料とかではなくここで働きたい』と言ってくれていました。利益が出たら社員に還元するということを社長や会長が常に発信してくれているので、私たちは社員が安心して働ける職場環境をこれからも作っていきたいと考えています。」

【取材協力】丸善工業株式会社
(2024年7月掲載)